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枝の上から見下ろす、黒い翼の彼のその視線は、いつものように好奇を向けた作り笑いではなかった。

なんとも訝しげで険しい。

いつもとは違う表情を見せる彼に、戸惑ってしまう。



ひょっとして、今の一部始終を見られていたのか?

だとしたら、この反応もわかる。



「……」



無言で、枝の上の彼を見上げる。

放たれる言葉の続きを待つように。



だが、目が合った途端、彼は目を大きく見開かせていたように思える。

後に、深くため息をついていた。



「…何なに?その瞳。…ひょっとして【夢殿】の力、覚醒しちゃったわけ?」

「……」

「そんな恐い目で見ないでよ。…瞳孔開いてるよ」

「……」

「そして、聖域覚醒の証。…黄金色の双眸。鏡で自分の瞳、見てみるといいよ?…あぁ、歩いて家に帰る頃には、元通りかもね」

「……」



一切言葉を返さず、黙って話を聞いていたのには、彼に対する警戒を解いてはいけないと考えたため。

何故、彼はここにやってきた?高見の見物なだけか?

仲間が俺の手でやられた今、俺に何かを仕掛けてくるのか…?