黒曜鬼の一段と悲痛な雄叫びが響くと同時に、柱状となっていた白い炎もドンッ!と膨れ上がる。

爆発したように思えたが、俺自身は爆風に少し煽られたのみで、吹っ飛ばされることなく。

目の前には、白い炎に包まれてメラメラと焼き尽くされた、ただの火だるまがあった。

しばらくすると、もううめき声すらも聞こえてこなくなった。



ただの火だるまを茫然と眺める。

…これはまだ、俺の選んだ道の始まりに過ぎない。

今後、こういうことが何度も降りかかってくるんだろう。妖怪にしろ、魔族にしろ、人間にしろ。



でも、後悔はしていない。

自分のために、誰か大切な人が傷付く。

それを何も出来ないでただ見ているしかないよりは、断然マシだ。



だから、これからも俺はずっと。

想像を越えていくんだ。




(絶対に…やってみせる)



火だるまは、白い炎が消え去って鎮火すると共に、カタチを失っていた。

黒曜鬼自身も、もう跡形もない。

地面には…漆器のように落ち着いた輝きを見せている、拳大の漆黒の宝石のみが残されていた。