…だなんていう明らかな嫌悪を見せることは出来ず。
渋々と無言で席を立つと、「スミマセン」ともさ男も一緒に席を立った。
「…こっちです」
「スミマセン」
「……」
最低限の会話以外は無言で、俺ともさ男はなずなの部屋へと向かう。
…いや、この男の何が嫌だってわけでもないんだけど。
何で、こいつに軽く嫉妬してんのかも、わからないんだけど。
話をしたら良いヤツかもしれないしなぁ、でもなぁ。
頭の中で悶々と、言い訳のような結論の出ない自己分析をしながら、もさ男を後ろに連れて階段を昇る。
二階に上がった右手には俺の部屋があって、その奥が、以前なずなが住み込み護衛していた時に使っていた部屋だ。
「…ここです」
「ハイ」
玲於奈の方をチラリと見るが、ヤツはやはりもさっと立っているだけだった。目が長い前髪に隠れて表情がよくわからない。その前髪切ってくれ。前見えるのか?
そんなケチを心の中でつけながら、なずなの部屋をノックする。
だが、応答がないし、気配がない。
…あれ。この部屋で合ってるよね。



