「…ん?何が?」

「ここに連れてきてしまって。ちと後悔してるかも。わっち」



川村が視線を落とし、口角は上げているもの、その表情は笑ってはおらず。

どこか悲しそうだ。



「こうなってることはだいたいは予想はついてたけどよ。けど、あの姿を伶士殿に見せるのは酷だったかの」

「…いや、多少ビックリしたけど。あんなゲッソリしてるなんて」

すると、川村は今一度「すまん」と呟いた。



「わっちは、なずぽへのこの心配や不安を一人で抱えるのはもう嫌だったのかもしれん。だから、伶士殿を巻き込んでしもた」

「川村…」



…俺だけじゃない。

川村も川村で思うことがあり、辛い思いをしている。

なずなを大切に思ってるのは、俺だけじゃなくて、ここにもいる。

俺一人が、頼って貰えずしょぼんとしてる場合ではなかった。



「…巻き込んだなんて。俺だって来たかったんだ。川村が後悔することじゃない」

「そりゃ、ありがたい」

「むしろ、連れてきて貰えてよかった。ただ戻るのを待っているだけじゃ嫌だし」

「…そーか」



その時、ちょうどエレベーターが到着して扉が開いた。