それに…他に誰か連れてきていないか、川村に確認していた辺り、なずなとしてもこの姿を周りに見せたくないということ本音の現れだ。

もちろん、俺にも。



(何でだよ…)



…ここで、俺の心の中に影が落ちる。



何で、俺を頼ってくれないんだ。

仮でも何でもなく、俺はなずなにとって限りなく身近にいる存在だと思うけど。…彼氏ってそうじゃね?

なのに、連絡のひとつも寄越してくれない。

確かに、あのゲッソリと激ヤセした姿は、女心としては触れられたくないものかもしれない。

ヤツは意地っ張りだし、負けず嫌いだし。

…でも、俺としてはそんなの構わないのに。なずなが芋けんぴになろうが、萎びた野菜になろうが、なずななんだから。

そんなの、男冥利に尽きない。



やはり俺は、なずなにとって、まだまだの存在なんだ。

これからの課題が浮き彫りとなってしまい、ため息が出た。



…だが、ここで拗ねてる場合じゃなかったりする。



「伶士殿、すまんな」



そんな考え事をしていると、突然。

エレベーター待ちで、横に並んでいる川村がボソッと呟いた。