「なずなさんの指示に従い、行動はしましたが…伶士さまの身に何が起こっていたかその詳細は、聞かされていないのです。…恐らく、この忠晴に余計な心配をかけさせないためかと」

「…そうか」

「なずなさんがそれからどうやって伶士さまを救い出したのか、今なずなさんがどうしているのかは、わかりませんが…ただ、忠晴が申し上げることが出来るのは、『伶士さまが何者かに囚われ、なずなさんは救い出そうと奔走していた』ということでしょうか」

「………」



…やはり、何かが起こっていて、それになずなが関わっていたことは確かなのか。

予感は間違ってなかった。



「旦那様は本日、奥様と東京で一泊されていて、明日お戻りになられます。詳細はそれから説明されるかと。お役に立てず、申し訳ありません」

「…いや、十分だよ。ありがとう、忠晴」

誰も教えてくれなかったことを、少しでも教えてくれた。今はそれで十分だ。

その断片でも知ることが出来ると、不思議と治まって冷静になれるもんだ。

…まだ、全てに納得したわけじゃないけど。