俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~


伶士は、誰にも渡さない。



全身を使って、花魁女郎蜘蛛を背後から羽交い締めの状態にした。

そして、私は言霊を口にし、術式を完全発動させる。



「…漆黒の火炎、金赤の闇…」



私の言葉ひとつに、生きたように揺らめいて反応する黒い炎。

捕らえるのは右手だけではなく、花魁女郎蜘蛛の体のあちこちから、プスプスと火種が燻り始めた。

「ああぁぁぁっ!」

更なる苦痛をまともに浴びて、花魁女郎蜘蛛は悲鳴を響かせる。

…この術は、禁呪。私自身が術陣。

手練れの親父とは違って、私にはこの禁呪を何回も発動させることは出来ない。せいぜい一回だ。

だから、標的を羽交い締めにでもして、逃げられないように…確実に術を喰らわすには、この方法しかなかった。



陰陽師であり、ボディガードのプライド。

…そして、女の意地だって見せてやるよ。



「黄金の地獄…【黒炎の華】」



技の名を呼ぶ。

私の声に反応して、一気に黒炎の柱が立ち込める。

私達を包むように黒炎は噴き上がるように立ち上り、目の前の景色は炎で遮られた。