「…良き追い風を得て、古い郷へ帰りし。追い風を得て然るにや、政を執行し故にや、計り難し…」



詠唱に合わせて、神威さんの翳した大剣から黄金の帯が噴き出して漂う。



「…出でよ、守護神。神童・立花神威の名において、身を代わられ給へし……【転換】」



ドン!と、黄金の帯が四方に弾けて光を放った。

眩し過ぎてパッと目を伏せてしまったが、光が落ち着いてくる。

そこには…神威さんを背に庇うような位置に、人影がある。



「…選手交代…代打、俺?…ぶははは」



一人でボケて、一人で笑ってるその男の声は…紛れもなく、さっき聞こえていたみんなに聞こえない声だ。

先程より、はっきりと聞こえている。



そして、先程まで神威さんが持っていた大剣を、いつの間にか彼が手にして構えている。

神威さんよりも背丈がある、蜂蜜のような色をした深みのある金髪の、俺と同じくらいの少年だ。

…だが、驚くべき点は。

服装。

肩当て胸当てという簡易な防具に、皮のブーツから、身なりが明らかにこの世界のものではない。

ゲームやファンタジーの世界の住人そのものだ…!