キミと、光さす方へ

何度か前を通ったことのある場所なので、迷わずにたどり着くことができた。


2階建てのアパートをマジマジと見上げてみると、くすんだクリーム色の壁のあちこちがひび割れている。


左右を高いビルに囲まれていて、年中日陰になっていそうな場所だった。


錆びた階段を上がり、一番手前にある201号室が松本くんの暮らす家で間違いなかったが、表札は出されていなかった。


あたしは手の中の地図を部屋を何度も確認した。


本当にここで合ってるのかな?


不安を抱きながらもインターホンを鳴らす。


部屋の中からピンポーンと、安っぽいチャイムが聞こえてきた。


それに続いて人が歩いてくる足音がする。


あたしは緊張して背筋を伸ばした。


もし違う人が出てきたら丁寧に謝って今日はもう帰ろう。


そう思っているとギィと玄関が音を立てて開き、男性が出てきた。


私服姿だったから、一瞬誰だかわからなかった。


上下灰色のスウェットを着た松本くんは、あたしの顔を見るなり目を見開いた。


どうやら部屋はあっていたようで、ひとまず安堵した。