キミと、光さす方へ

一瞬、松本くんは顔を上げて田中くんを見た。


しかしなにも言わずにうつむいてしまう。


「もしかしてさ、あの噂本当だから反論しねぇとか?」


田中くんは松本くんの机に両手を置いて言った。


それでも松本くんはなにも言わない。


否定も肯定もしない。


その態度は田中くんをイラつかせた。


「聞いてんのかよ? 転向初日から俺らのこと無視しやがって!」


そう怒鳴ると松本くんの座っている椅子を蹴りあげたのだ。


ガンッと鈍い音が教室に響く。


近くにいた女子たちが教室後方へと避難した。


しかし、松本くんはなにも言わない。


顔を上げようともしない。