キミと、光さす方へ

あたしは《人殺し》という文字にくぎ付けになり、動けなくなってしまった。


「こんなの絶対に嘘だけどさ、ここから一気にヒートアップしてるんだよね」


「そうなんだ……」


気がつけばスマホを持つ手に力が入りすぎて、汗が滲んできていた。


どうしてこんな噂が立っているんだろう?


松本くんは確かにちょっと変わっているけれど、それだけだ。


協調性はないけれどそれだけで、ここまで言われる筋合いはないと思う。


そこから先の書き込みはほとんど噂を面白がって書き込まれたものばかりになった。


出てくる言葉の大半は《人殺し》と《成敗してやる》にかたまってきている。


それを見た瞬間金曜日の放課後の出来事を思い出した。


男子生徒たちは松本くんの靴を隠していたことだ。


あれはもしかして、この書き込みを見た生徒たちがやったことなんじゃないかと思い始めていた。


「ちょっとこのままじゃまずそうだよね?」


泉に言われてあたしは曖昧に頷いた。


助けてあげたいという気持ちはある。


でもそれは、自分を目立たせるということと同じだった。


あたしはあまり人前に出たくない。


そっと、教室の隅で波風なく生きていたいのだ。