松本くんは別にイジメられているわけでもない。
自分から殻に閉じこもっているだけだ。
好きにさせておけばいい。
あたしはそう考えていた。
それなのに……。
休憩時間の度に、泉との会話の合間に、あたしは松本くんの姿を目の端に移すようになった。
松本くんはトイレや移動教室の時以外はずっと自分の席に座って動かない。
やっぱり本を読むわけでも、スマホをつつくわけでもなく、ただそこに座ってうつむいているのだ。
長い前髪で目を隠して、まるで何かから逃れるようにひっそりと。
松本くんの存在はいつか、教室の一部になるんじゃないか。
景色のひとつ、壁の柄、もしくは黒板の隅っこの忘れられたラクガミみたいな。
今は目立っているけれど、それは転校してきて日が浅いからだ。
あたしは目の端に松本くんを見ながら考える。
彼はあたしと同じで太陽の光を避けている。
しかしやり方が違うだけなのだと。
「なぁ琴江、赤ペン持ってねぇ?」
勇人の声で我に返った。
いつの間にかあたしの目の前に立っている。
自分から殻に閉じこもっているだけだ。
好きにさせておけばいい。
あたしはそう考えていた。
それなのに……。
休憩時間の度に、泉との会話の合間に、あたしは松本くんの姿を目の端に移すようになった。
松本くんはトイレや移動教室の時以外はずっと自分の席に座って動かない。
やっぱり本を読むわけでも、スマホをつつくわけでもなく、ただそこに座ってうつむいているのだ。
長い前髪で目を隠して、まるで何かから逃れるようにひっそりと。
松本くんの存在はいつか、教室の一部になるんじゃないか。
景色のひとつ、壁の柄、もしくは黒板の隅っこの忘れられたラクガミみたいな。
今は目立っているけれど、それは転校してきて日が浅いからだ。
あたしは目の端に松本くんを見ながら考える。
彼はあたしと同じで太陽の光を避けている。
しかしやり方が違うだけなのだと。
「なぁ琴江、赤ペン持ってねぇ?」
勇人の声で我に返った。
いつの間にかあたしの目の前に立っている。



