キミと、光さす方へ

そして階段をあがってくる足音。


あたしは慌ててベッドから降りて、テーブルの上にあるおにぎりを勉強机へと移動させた。


コンコンと2度ノック音がして「はい」と返事をすると、勇人が顔を覗かせた。


そのいつも通りの雰囲気にホッと安堵している自分がいる。


散々なことがあったけれど、勇人や泉、クラスメートたちは変わらない日常を送っている。


その事実があたしを安心させた。


「事情は泉から聞いた」


「どうして泉から?」


あたしはあれから誰にも連絡していない。


心の整理ができていなくて、ずっと閉じこもっていたのだ。


「昨日偶然、兄弟の付き添いで病院にいたんだって。そこで直哉が緊急搬送されてきたんだ。あいつ、何度救急車に乗れば気が済むんだろうなぁ」


勇人はわざと明るい声で言った。


だけどあたしは笑えなかった。


今回のことはあたしにも原因がある。


「さっきこっそり先生からも話を聞いてきた。直哉は目が覚めて、まだ病院にいるって」


勇人の言葉にあたしは顔をあげた。


直哉、目が覚めたんだ!