キミと、光さす方へ

☆☆☆

それからもあたしはなにもできなかった。


作ってくれたおにぎりを食べることすら、億劫な気分だ。


ベッドの上でゴロゴロと寝返りをうつばかりの1日が過ぎていく。


そして夕方近くになった時だった。


玄関のチャイムが鳴った。


お母さんが出ていく音がした。


「こんにちは」


その聞きなれた声にあたしは驚いて上半身を起こした。


「あら、こんにちは」


「琴江、大丈夫ですか?」


勇人だ。


毎日学校で聞いている声だから、聞き間違いじゃなかった。


「えぇ。少し熱っぽくて」


「お見舞いさせてもらっていいですか?」


「もちろんよ。……石井くん」


「はい」


「琴江のこと、よろしくね」


「……はい」