キミと、光さす方へ

☆☆☆

翌日。


あたしはなにもする気力がなくて学校を休んでしまった。


お母さんもお父さんも今日は家にいるけれど、なにも言わなかった。


「琴江、少しでも食べなさい」


昼頃になり、お母さんが心配して部屋に顔を出した。


手にはおにぎりが乗ったお皿を持っている。


「お母さん……直哉は?」


「今は他人のことよりも自分の心配をしなさい」


お母さんは冷たく言い放ち、テーブルにお皿を置いた。


『他人』という言い方がつき放されているように感じられた。


「直哉は前の学校でもイジメられてたんだよ」


ぼんやりとおにぎりを見つめてあたしは言った。


部屋を出ようとしていたお母さんが振り返る。


「今の学校でもそうなんだよ。どれだけイジメられても全然抵抗しなかった。
本当は強いし、逃げ脚も早いのに、やられたばっかりだった」


思い出して涙が滲んできた。


「それでも、あたしを助けるときだけは相手に立ち向かったんだよ」


お母さんは静かに聞いている。


「周りから人殺しって言われても、1人ぼっちでご飯を食べても、なにも言わないの。まるでそれが、弟への贖罪みたいだった」