キミと、光さす方へ

あたしは太陽の光を浴びることになる。


浴びたくないのに、陰から引きずり出されてしまうことになる。


勇人と一緒にいることで、付き合うことで、きっと様々な視線があたしへ向かう。


それはあたしにとってなにもよりも恐ろしいことだった。


「ぼーっとしてどうした?」


身をかがめ、首をかしげて聞いてくる勇人にあたしは数歩後ずさりをした。


あまりの至近距離に一瞬心臓がドクンッと跳ねた。


それなのに、勇人はお構いなしにあたしの右手を掴んできた。


大きくて暖かな手にひどく動揺してしまう。


どうすればいいのかわからなくて、全身の力が抜けていく。


「ほら、行くぞ」


手を引いて、強引に教室を出る勇人。


あたしは引きずられないように、慌ててついて歩く。


ダメだ。


このままじゃ太陽の中に引きずり出されてしまう。


あたしはこの街にとって隠さなければならない存在なのに、暴かれてしまう。


なにもかもが、日向の中に……。


あたしは無意識の内に勇人の手を振り払っていた。


階段に差し掛かっていた勇人が驚いて立ち止まり、振り返る。


「あ……ごめん」


あたしは勇人に握られていた右手を左手で包み込む。


心臓はまだドキドキしている。


顔が熱くて、まともに勇人の顔を見ることもできない。