キミと、光さす方へ

「なんだ、俺は目印か」


直哉がそう言うので、あたしはその手を握り締めた。


「冗談だよ。はぐれないようにちゃんと手をつないでて」


「そうだな」


こんな風にごく普通なデートをする日が来るとは夢にも思っていなかった。


あたしは今最高に幸せな気分だ。


隣りに並んでいる直哉に時々視線をやると、直哉も緊張がほぐれてきたようで、リラックスしている。


こうしていると、つい忘れてしまいそうになる。


あたしが弟を殺してしまったこと。


直哉が自分を人殺しだと言っていること。


大きく変化したように見えて、実はなにも変わっていないのかもしれない。


今はただ、現実から目をそらしているだけ。


なにも見えないフリをして、幸せをかみしめているだけ。


少しだけ不穏な感情が胸をよぎる。


本当にこのままでいいの?


最近ずっと出てこなかったのに、心の中のもう1人のあたしがひょっこり顔をのぞかせる。


本当に幸せになれると思ってるの?


それは意地悪くあたしに話しかける。


だからあたしはつないだ手に力を込めた。