キミと、光さす方へ

今日の松本くんと同じになってしまう。


「宿題を……してたの」


あたしはなんとか声を絞り出した。


その声は微かに震えていたけれど、勇人は納得したように笑顔を浮かべた。


「なんだ、そうだったのか。俺は忘れものを取りに来たんだ」


そう言い、自分の席へ向かう。


あたしはホッと息を吐き出して出口へと足を向ける。


今のうちに帰ろう。


そう思ったのだけれど……。


「一緒に帰ろうぜ」


すぐ後ろで声がして悲鳴を上げて振りかえった。


そこにはスマホを手にした勇人が驚いた顔で立っている。


「なんだよそんなに驚いて」


「だ、だって……忘れ物は?」


「忘れもの? これだよ」


勇人はスマホを掲げてみせる。


どうやら勇人の忘れものはすぐに解決したみたいだ。


でも、あたしは勇人から視線をそらせた。


昨日の昼間、泉に言われた言葉を思い出す。


『勇人ってさ、絶対に琴江のことが好きだよね』


もしそれが本当なら。


いや、もしでもあり得ないけれど、あり得てしまったら。