キミと、光さす方へ

「松本くんも、前より会話するようになったよね」


泉に言われてあたしは頷いた。


あたしが毎日話しかけているせいか、松本くんは教室内でもボソボソと返事をしてくれるようになっていた。


それを見たクラスメートの男子たちが、時々松本くんに話しかけるようになったのだ。


それは必要事項とかちょっとしたことばかりのようだけれど、それでも変化があったことには違いなかった。


少しずつクラスの雰囲気が松本くんを受け入れるようになってきているのがわかった。


「この調子で松本くんも心を開いてくれるといいね」


泉に言われてあたしは大きく頷いた。


あたしと泉は今でも時々松本くんが関与した事件について調べている。


しかし、まだ何も出てこない。


何も出てこないのなら、もうこのままでもいいんじゃないかと思え始めていたところだった。


わざわざ過去をほじくり返さなくても、松本くんは前に進むことができるかもしれないと。


その時だった。


不意に廊下が騒がしくなってあたしと泉は廊下側の窓へ視線を向けた。


女子生徒たちの騒ぎ声が聞こえてくる。


なにかあったのかな?


泉と目配せをして廊下に出ようとしたその時だった。