キミと、光さす方へ

「琴江は間違ったことはしてないよ。勇人は本当にタイミングが悪かったんだよ」


でもね。


と、泉は真剣な表情であたしを見つめる。


「松本くんのことが本気で好きなら、きっとすごく大変だと思うよ?」


「うん」


あたしは頷く。


今だって大変なんだ。


だから十分理解している。


「勇人と付き合えばきっと毎日楽しいし、思い悩むことも少ないと思う」


「うん」


「それでも、松本くんなんだよね?」


「うん……!」


あたしは大きく頷いた。


それでもあたしは松本くんを選んだ。


苦しくて辛いかもしれない恋を選んだんだ。


「そっか。それなら頑張りなよ!」


泉はいつの間にか泣き笑いの顔になっていて、あたしの背中を勢いよく叩いた。


「ふふっ……なんで泉が泣いてるの?」


「なんでだろうね? わかんない。でも嬉しい。琴江が自分の気持ちに素直になって、幸せになろうとしてくれてることが、嬉しい!」


続いて泉はあたしの体をキツク抱きしめてきた。


2人して抱きしめ合って地面に転がってしまう。


それでも離さなかった。


一番の親友を互いにきつくきつく抱きしめる。


そしていつまでも、バカみたいに笑っていたのだった。