キミと、光さす方へ

「直哉か?」


退院祝いパーティーの日から、勇人は松本くんのことを下の名前で呼ぶようになった。


あたしはコクリと頷く。


頷いた瞬間涙がこぼれ落ちそうになって、慌てて顔をあげた。


「そっか……」


勇人は辛そうな笑みを浮かべる。


怒ったり泣いたりするのかと思ったけれど、ただ大きく息を吐きだしただけだった。


「あのさ、ひとつ気いていいか?」


「うん」


「琴江、少しは俺のこと好きだっただろう?」


その質問をする時、勇人は照れたように笑っていた。


辛いはずなのに、笑っていた。


「そう……だね」


あたしは頷く。


確かにあたしは勇人のことが好きだった。


胸がドキドキしたし、一緒にいると楽しかった。


だけど、それ以上のトキメキを知ってしまった。


「そっかぁ……その時に告白してたらなぁ」


勇人は悔しそうに顔を歪める。


「ごめん、勇人」


「謝るなよ。琴江は悪くない」


「うん……」