キミと、光さす方へ

大人しく体調が悪いということにして、泉に保健室の場所を聞けばいい。


そうすれば、さっきクラスメートたちを無視していた理由も納得してもらえるから。


陰で生きていきたければ、良くも悪くも目立ってはいけない。


松本くんは泉の言葉に便乗するしかないのだ。


それなのに……。


うつむいたまま、松本くんは左右に首を振った。


「え? 体調は悪くないってこと?」


泉は眉間にシワを寄せて聞く。


松本くんはゆっくりと頭を動かして頷いた。


その瞬間こちらに注目していて男子たちから舌打ちが聞こえてきた。


その音はとても大きな音に聞こえて。


その音は、なにかが始まる合図のように聞こえて。


あたしはビクリと身を震わせる。


「大丈夫そうみたいだよ」


あたしは泉の腕を掴んで言った。


これ以上ここにいたらまずいという気持ちが湧いてきた。


今まで静かに、平穏に過ごしていた毎日が奪われてしまう。


「でも……」


「いいから、行くよ」


あたしは少し強引に泉の腕を引いて、自分の席へと戻ったのだった。