5台置かれている内の一番奥のパソコンの前にすわり、鞄を床に置いてネットを接続する。


松本くんが本当に人殺しなら、その事件がどこかの記事に残っているはずだ。


あたしたちは今16歳。


最低でも16年前の記事までさかのぼればそれは出てくる。


でもゼロ歳の赤ん坊が人を殺すなんてことはないはずだから、もう少しは絞れるのだ。


それでも膨大な数の記事を読まなければならないことはわかっていた。


「松本くんの心の中にある闇が取り払われるなら、それでもかまわない」


あたしは自分に言い聞かせるように呟いた。


きっと泉も今のあたしと同じ気持ちだったんじゃないかな。


弟を死なせてしまった過去は変えられない。


それなら少しでもこれからのことを変えていってあげたい。


そう、願ってくれていたのかもしれない。


それは本人が気がつき、変えていかないと難しいことだった。


それでも、周囲の人間が手助けをすることならできる。


あたしは松本くんにとって、そういう人になりたかった……。