キミと、光さす方へ

瞬きをしてそう言うあたしに泉は呆れ顔だ。


「琴江も、松本くんと一緒に進歩できたらいいね」


そう言われてあたしは苦笑いを浮かべる。


「ほら直哉、お前も飲めよ」


「直哉……?」


勇人にいきなり呼び捨てにされた松本くんが怪訝な表情を浮かべる。


しかし文句を言おうとした口と途中で止めて、ジュースに口を付けた。


その様子を見てあたしと泉は目を見かわせて笑い合う。


勇人は少し強引だけど、松本くんにはこのくらいがちょうどいいのかもしれない。


あたしは本当に楽しい時間を過ごすことができたのだ。


みんなと一緒においしいものを食べて、笑って。


一瞬でも、辛い過去を忘れていたかもしれない。


でも……。


『直哉』という名前を聞いた瞬間、お母さんが険しい表情になり、リビングを出ていったことに気がつけなかったのだった。