キミと、光さす方へ

幸せから遠ざかるということは、人から遠ざかるということでもあるのかと、今さらながら納得した。


それからはあたしが泉と一緒に前を歩き、いつもの道を歩いた。


いつも帰る時間に比べれば自転車の量が格段に多い。


忌わしい、白色の自転車が通り過ぎるとつい視線を向けてしまう。


ちょっとしたブレーキ音が聞こえてくると不意に足を止めてしまったりもした。


でも、その度に泉があたしの手を握り締めてくれた。


「大丈夫だよ。無理しないで」


と、声をかけてくれる。


そうして歩いていると、気がつけば赤い屋根の家が見えてきていた。


あの十字路だ。


あたしはふっと肩の力が抜けるのを感じた。


帰って来られた……。


たったそれだけのことなのに、胸の奥がジンッと熱くなる。


こんな早い時間帯に家にたどり着いたことなんて、小学校時代以来のことだ。


あたしはちょっと緊張しながら玄関のドアを開けた。


事情を説明していたから、すぐにお母さんが出てきてくれた。


「あら、みんないらっしゃい」


なにか料理をしていたようで、キッチンからは美味しそうな匂いがしている。


「泉ちゃんに勇人くんね。それにあなたが、松本くん?」


聞かれて、松本くんは「はじめまして」と、おじぎをした。


その声は聞きとれないくらいに小さなものだったけれど、よしとしよう。