キミと、光さす方へ

☆☆☆

混雑している昇降口なんて何年ぶりに見ただろうか。


生徒たちが我先に帰ろうと列を作って待っているのだ。


「うわぁすごい」


そんな呟きは周囲のざわめきによって簡単にかき消されてしまう。


あたしは隣にいる泉の手を握り締めた。


「大丈夫?」


「うん、まだ大丈夫」


あたしは頷く。


靴を履き替えて外へ出ると、後は流されるように校門へと向かう。


途中で何台もの自転車があたしの横を通り過ぎていったけれど、気にしている余裕はなかった。


「どこにこれだけの生徒がいたの……」


どうにか校門を出て大きく息を吐きだした。


「琴江はまず人ごみになれなきゃダメだね」


泉が隣でクスクスと笑っている。


そう言われればそうだ。


人ゴミなんてこの前勇人と遊園地へ行ったときに経験したくらいだ。