キミと、光さす方へ

「その分、忘れちゃうのかな」


あたしは小さな声で呟いた。


「え、なに?」


泉が聞き返してくる。


「幸せになった分だけ、弟のことを忘れると思う?」


泉は驚いたように目を見開いて「琴江は忘れないよ」と言ってくれた。


「だって、10年間ずっと苦しんできたでしょう。自分が幸せになることは許されないことだと思って、我慢してきたでしょう?」


言われて、あたしは視界が滲むのを感じた。


目の奥がジンジンと熱い。


自分は幸せになっちゃいけない。


なるべきじゃない。


そう思ってきたのだって、あたしの自己満足だ。


そんなこと誰も望んでいなかった。


自分自身がそうしたくて、心の中にもう1人の自分を作り上げて、その声に従って生きてきた。


あたしは人殺しなんだから目立たないように。


あたしは人殺しなんだから幸せにならないように。


あたしは人殺しなんだから心からの笑顔は見せないで。


そうすることが弟への贖罪だった。


誰もあたしを攻めないから、そうするしかなかった。