キミと、光さす方へ

それでも、勇人はきっとなにも言わずに待ってくれるのだろう。


あたしが帰ろうと言うまで、教室で待ってくれているのだろう。


「勇人、部活は?」


泉が聞く。


「今日は休み」


と、勇人は答える。


勇人はそのまま鼻歌を歌いながら自分の席へと戻っていく。


「あらま、嬉しそうなこと」


泉は勇人の後ろ姿を見てため息交じりに言った。


「いいのかな、あたし」


「なにが?」


「幸せになっても」


「もちろんでしょ」


泉があたしの手を握り締めて言う。


あたしはぼんやりと勇人の顔を眺めていた。


勇人はなにも知らない。


だからあたしのことが好きなんじゃないかと思ってしまう。