キミと、光さす方へ

「そう、思う?」


泉は大きく頷いた。


あたしは今からでも変われることはできるだろうか。


少しの期待が胸の中に膨らんでいく。


同時に、本当にそれでいいのだろうかと考える自分もいる。


弟はもう笑えない、泣けない、怒れない。


それなのにお前だけ幸せになっていいのかと。


やっぱりあたしはまだハッキリと割り切ることができないのだろう。


こうして何度も何度も同じ場所を行ったり来たりしてしまう。


「琴江」


考え込んでいたところに後ろから声を掛けられて振り向くと、勇人が立っていた。


「なに?」


「今日一緒に帰ろうぜ」


ニカッと白い歯をのぞかせて言う勇人。


泉へ視線を向けると、泉はうんうんと頷いている。


「そう……だね」


あたしはゆっくりと頷く。


帰る時間は少し遅くなるかもしれない。


下校時の沢山の自転車に囲まれるのはさすがに怖い。