キミと、光さす方へ

☆☆☆

『人のことばかり心配してるね』


まさか、松本くんにそんなことを言われるとは思っていなかった。


教室に戻ったあたしは机に肘をついてぼーっとしてしまう。


転校生である松本くんでもそう見えてしまうくらい、あたしは自分のことをそっちのけにしているだろうか。


「ちょっと琴江。今日はいつも以上に変だよ?」


泉があたしの席の前に回り込んできて言った。


「いつも変みたいな言い方しないでよ」


「琴江はいつも変でしょ?」


真面目な顔で言われると本気でへこんでしまいそうになる。


「なにかったでしょう?」


あったような、なかったような。


「ねぇ泉もうすぐ弟が死んでから10年なの」


あたしの言葉に泉は目を見開き、そしてコクンと頷いた。


「そっか」


「あっという間の10年だったよ」


弟が生きていれば13歳だ。


生意気盛りになっていたかもしれない。


そう思うと胸がひどく傷んで、また暗くなりそうになってしまう。


「そろそろ、いいんじゃない?」


暗くなりかけたあたしを泉の声が引き上げてくれる。


「自分から幸せに手を伸ばしても、きっと弟さんは許してくれるよ。だって琴江は10年間ずっと自分を殺してきたんだから」