キミと、光さす方へ

「あ、あのさ!」


あたしは松本くんの後ろ姿へ向けて声をかけた。


「え?」


松本くんはけだるそうな雰囲気を身にまとい、振り向く。


「あの、えっと……ちょっと話しない?」


またしどろもどろになってしまう。


松本くんは首をかしげて「また?」と聞いてきた。


その言葉にあたしはグッと返事に詰まってしまう。


昨日の放課後、あたしは松本くんの家まで押し掛けたのだ。


それなのにまだ何を話すというのだと、そんな空気があった。


「す、少しでいいから」


あたしはそう言うと、松本くんの右手首を握り締めて歩き出していた。


それはほとんど無意識の行動で、歩きながら自分自身に驚いていた。


普段なら絶対にこんなことしない。


あたしはもっと日陰で、ひっそりと生きてきたはずだ。


それが、松本くんと出会って少しずつ変わろうとしているのがわかった。