キミと、光さす方へ

ハッと大きく息を吸い込んで目を覚ました。


ベッドから起き上がると全身汗でぬれている。


あの時のことを夢に見るなんて、いったいいつぶりだろうかと、頭を振った。


夢に見ないということはあたしの中で過去になりつつあったということかもしれない。


それが、人殺しと名乗る松本くんと出会ったことで、また見るようになったんだ。


あたしは一階に下りて簡単にシャワーを浴びた。


汗はすぐに引いて、朝の空気がヒヤリと感じる。


あの日から、あたしは自転車がダメになった。


登下校の時には嫌でも見てしまうから、できるだけギリギリの時間に登校して、みんなが帰ったのを見計らってから帰るようになった。


自分で自転車に乗るなんて持っての他だった。


始めて勇人に家まで送ってもらったときに倒れたのも、白い自転車を見たのが原因だった。


弟と同じ白色の自転車は、他の自転車に比べてみてももっとダメだった。


あの事故があってから、家族はどこかぎこちなくなってしまったような気がしていた。


当時暮らしていた街で頑張っていたのに、あたしがあの坂道に差し掛かる度におお泣きをしたり、貧血を起こして倒れてしまうようになり、引っ越しせざるを得なくなったのだ。