キミと、光さす方へ

小さな弟は自転車ごと空に跳ねあげられた。


弟の白い自転車は青い空に吸い込まれてしまいそうに見えた。


ぶつかってきた自転車はそのまま横倒しに倒れたままだ。


自転車より先に弟の体が地面に打ち付けられた。


そしてそれを追いかけるように自転車が落下する。


自転車のハンドルが弟の腹部に激突するのがわかった。


弟は大きく身をよじらせる。


しかし声は聞こえてこない。


あれだけ痛い思いをしたのに泣き声がしない。


あたしは真っ白な頭で自転車を投げ出し、弟に駆け寄った。


近づいてみると、コンクリートに血だまりができていた。


小さな弟の体が流れ出た血だとわかった瞬間、全身が冷えていった。


どうしよう、どうしよう、どうしよう。


こんなときどうすればいいかなんてあたしは知らない。


とにかく大声で泣いたんだと思う。


ギャーギャー喚いて、その声が近所の人に聞こえたんだ。


何事かと出てきた大人たちは事故を確認してすぐに救急車を呼んでくれた。


いつの間にかお母さんがあたしの隣に立って、あたしの体を抱きしめていた。


それでもあたしは泣きやまなかった。


もう泣けなくなった弟の代わりに、いつまでもいつまでも泣いていた。