キミと、光さす方へ

「……話ってそれだけ?」


松本くんはあたしから視線を反らせて言う。


明らかに帰ってほしそうな声色だ。


「うん、そうだね」


本当はなんでもいいからもっと会話がしたかった。


そうすれば松本くんのことを理解できそうな気がしたから。


でも、これ以上の長居はできない。


これ以上ここにいればきっと嫌われてしまう。


そんな予感がして、あたしは素直に立ちあがった。


「外暗いけど、帰り平気?」


玄関まで出てきてくれた松本くんが聞いてくる。


時刻は7時半になっていた。


「うん、平気。突然押し掛けてごめんね」


あたしはそう言うと、暗くなった街を歩き始めた。


どこの家も明かりがつき、夕食の匂いが漂ってきている。


あたしは早足になりながら、何度も松本くんの言葉を思い出していた。


『言っただろ。俺は人殺しだって』


「そんなこと、ない」


あたしはポツリと呟いたのだった。