キミと、光さす方へ

松本くんはけだるそうに部屋の中を見回している。


「こんなボロアパートに暮らしてるのって、どうしてだと思う?」


質問に質問で返されてあたしは「えっ?」と、返事に困ってしまった。


確かに新しいとは言えないアパートだし、部屋の中もシンプルだ。


でも、それと今の話とは無関係だ。


はぐらかされているんだとうかと思って、あたしはジッと松本くんを見つめた。


松本くんはようやく視線をあたしに合わせると、ふっと笑顔を浮かべた。


それは初めて見る松本くんの笑顔で、見た瞬間心臓がドクンッと大きく跳ねた。


な、なに今の感じ……。


まだ心臓はドキドキしている。


まるで矢に射抜かれたような衝撃だった。


勇人にも感じたことのない感覚にとまどってしまう。


「父親が出て行ってからなんだ。こんな生活になったのは」


突然の告白にあたしは返事ができなかった。


「俺のせいで、家に嫌がらせをされて、それが我慢できなくて逃げた」


「え……?」


「言っただろ。俺は人殺しだって。だからずっと嫌がらせを受けてる」


あたしは大きく目を見開いた。


松本くんが本気でそんなことを言っているのだとしたら、それはとても悲しいことだった。


だって、目の前にいる松本くんが人殺しだなんて、到底思えないから。