この人は知らない。

私に使い道なんかないのに。


私に騙されて……こんなところまで来て。


私は本当は桜木の彼女なんかじゃない。


だから剣にも楯にもならないの。



「騙して……ごめんなさい」と、ボソッと呟いても、それは風に揺れる雑木林の音によって消される。



辺りは暗くなっていた。


ごくりと唾を飲み込んで、廃墟に足を踏み入れる。


あちらこちらに割れたガラスの破片が落ちていて、足音がパキパキと音を変えた。


「……っ」


「ひでぇなこりゃあ……」


「逢美の奴らがやったんだよな……これ」



廃墟の奥に足を進めていくうちに、何人もの人が倒れていた。


"綺麗な顔"で眠っている。

怪我しているところが見当たらない……


怪我をさせる前に、多分一発で仕留めたんだと思うけど……。


自分の仲間達が倒れているところを見て、顔面蒼白の茶髪とスキンヘッドは落ち着かないのか体を小さく揺らしながら歩いている。