【完】黒薔薇の渇愛







「しっかし萎えて俺はつまんない思いをしたけど。
 天音ちゃんにとっては良いことだったんじゃない?
 俺にやられずに済んで。」



ギシリと体勢を変えて、桜木は床に足をつけベッドに座ったまま
近くにあるテーブルに長い手を伸ばし、タバコを取って吸い始めた。


ぷかぷかと浮かぶ、タバコの煙で出来た輪っかが
私の目にしみて、余計に涙を流させる。



「ねえ」


呼び掛けられて、恐る恐る桜木を見る。



「どんな時でも、例えば敵わない相手だとしても
 抵抗しないと、ダメでしょ。」


「……」


「抵抗とは、何の武器も持たない無力な人間が、唯一敵に与えられる攻撃だってことを知れ」


「……そんなの、」


「できないって言うな。
 現に君はこの俺に対して抵抗しただろ。
 そして今無事でいる……この意味わかる?」


「……でも」


「でも?」


「私はあなたみたいに強くないから……怖いの」