【完】黒薔薇の渇愛







ポロポロと落ちる涙がこれでもかと言うほど溢れ出てくる。

そんな私から、身ぐるみを剥がすようにシーツを奪い取って、強引に桜木の方に向かせる。



「泣かないでよ、みっともない」


「……っ、だって……」


「ほんっと天音ちゃんは俺をイライラさせるのが上手だね。
 萎えちゃったんだけど……どうしてくれんの」


「そんなの知らな……」


「色んなことから、いつまでも逃げてんなよお前」



「ーーッ」




私は桜木という男をそれほど知らない。


なのに桜木は、的確に私という存在をえぐってくる。


私のすべてを知っている訳でもないこの男が
何もかも知っているみたいな言葉を投げつける。


私は桜木の目が嫌い。


なに考えてるか分かんないその目は
人の心を映し出す鏡の様で、怖い。


怖いから見たくなんかないのに……。


その目は、口は。


私に『逃げるな』と逃げ道をなくす。