【完】黒薔薇の渇愛






私の声を無視して、もう一度哲の前に戻る桜木を見てハラハラと落ち着かない。


せっかく桜木のこと止めたのに……

なんで煽るかなあの人!?


もう止める術が思い付かなくて、ひとり狼狽えていると。


桜木が哲を見下しながら、鼻で笑った。



「お前らほんと『黒薔薇』『黒薔薇』うるさいよ?
 ……そう呼ぶなって、俺いろんな奴に何回も言ってるんだけど。
 なんで皆呼ぶかねぇ」


「……」


「つーか、俺が女の言うこと聞いてお前のこと見逃してると思ってんの?
 俺、そこまで優しくないんですけどー」


「……っ」


「天音ちゃんのことは、天音ちゃんが許したから、これ以上口出し……いやこの場合手か?
 しなかっただけ。
 でも俺自身煽られたんじゃ、黙ってるわけにはいかねーよな?」


「……っ、花なんてな、いつか散るんだよ。
 今だけだぞ逢美なんて……。」


負け惜しみを言う哲に、桜木はニィっと笑った。