【完】黒薔薇の渇愛






優しいって分かってるはずなのに
冷たい桜木の声が怖い。


「ねえ、天音ちゃん。
 守るよ、こんどこそ」


「……」


「怖い思いしたよね……?
 俺がコイツのこと、天音ちゃんと同じくらい怖い思いさせてあげるからね」



グッと桜木が拳を握る。


歪み始めたのは桜木の心?

それとも私の視界?



桜木が……私のためを思ってやってくれてるのは分かってる。



けど、こんなの間違ってるよ。



雑木林に潜んだ倉庫の中は、太陽の光すらも受け付けない。


そのせいで、桜木に近づく度、闇に引きずりこまれている様に感じた。


それでも。


彼と向き合う。


私は両手で挟む様にして桜木の頬を軽く叩き、こっちに向かせた。