【完】黒薔薇の渇愛




止められるのは私だけ。


雪羽さんってば、意外とズル賢い。


戦略にハマってるみたいで、少しだけ納得できないけど。


「……っ、あーもう!」


そんなことよりも、桜木を止めなきゃって体が勝手に動いちゃう。


「まあ、桜木さんも。好きな女があんな目に合えば冷静ではいられなくなるんだろうなー。」


「あの人の人間らしいとこ、久しぶりに見ましたね」


「あぁ……確か和倉大地が意識不明って知らされて以来じゃね?あの焦りよう。
 ……つか雪、和倉大地の妹が天音ちゃんだってこと知ってた?」


「えっ、初めて知りました」


「はは、初めて言いました~」


煙草を吹かす男ふたりがそんな会話をしていることを、私は知らずにいた。