【完】黒薔薇の渇愛








「えっ、お兄ちゃんが!?」


あれから一週間が経った。


不運だった私に舞い込んできた、嬉しい知らせ。


訪れた春と、終わりを告げた冬。
今年の桜は咲くのが早かった。


桜並木から落ちていく桃色は、ひらりと舞う蝶の様に私の歩く速度をはやめた。



耳から携帯を離しタップして、お母さんとの通話を切る。


電話に出たとき、お母さんすっごく嬉しそうだった。

泣いてなに言ってるか分かんなかったし
でも……そうだよね。

お兄ちゃんが事故にあったあの日から、不安しかない毎日だったもん。


そんなお兄ちゃんの意識が回復するなんて。
本当に唐突な出来事に驚きと、嬉しさと、現実離れの様なものを感じる。



「よ……かったぁ」


目眩にも似た安堵感に涙がでてくる。


早く……会いたい。


会って話がしたい。



桜木にも知らせてあげなきゃ。