【完】黒薔薇の渇愛






「一昨日……桜木と一緒にいた、女の人……誰?」


「女?」


「雨の中、桜木が上着肩にかけてあげてたの見たよ。
 覚えてるもん、見てて辛かった」


「なにそれ……嫉妬?」



素直に頷く。


パタパタと揺れ動くカーテンから、そろそろやってくる春の匂いを感じた。




「あれね、姉さんだよ」


「……お姉さ、ん?」


「そっ。……あっ、その事で思い出しちゃったんだけど」


「……」


桜木が柔らかい笑みを向ける。



「最近、たまには人に優しくてみようかなって思えてきたんだよね」


「桜木が……?なんで??心変わり?」


「というよりは、天音ちゃんに褒めてもらうため?」


「……っ、私に?どうして」

「さあ、知らない。
 気づけば、天音ちゃんのことばっかり考えてるから。
 優しくしようってよりは、天音ちゃんの喜ぶ顔がみたいだけだったりして」


「それって……」


「ハッ。つまりこれってさ、俺って君のこと実はものすごく大好きなんじゃない?」