それからも大地さんが目覚めることはなかった。


あの事故から、もう一年が経とうとしてる。


大地さんの家族に会わない様に、だけど見舞いの花だけは置いて立ち去る。



大地さんがこんな事になっても、時間は過ぎるし、地球は回るし、腹は減るし。


刺激を求めて暴走族なんてやってりゃ尚のこと。
平和なんて一瞬で、次から次へと事件が起きる。



「岡本奏子ー?」


絶縁間近の母親から連絡がきた。

絶対に俺に頼ろうとはしない母親の声を久しぶりに聞けたと思ったら、液晶画面越しに泣き叫ばれて、これまた耳がやられそう。



『そっ……そうなの、綾実ちゃんの帰りが最近遅くてね。
 私もお父さんも心配で。
 夜遊びのこと注意したら『別に私の勝手でしょ!』って怒鳴られちゃって……』


「へぇー、あの姉さんが?すごいじゃん」


『もう!真面目に聞いてよ!!』


「……で?そのことと岡本奏子、なにが関係あんの?」


『実は……2ヶ月前くらいに綾実ちゃんに彼氏ができてね?
 その時からなの、あの子の夜遊びと気性が荒くなったの』


「ふーん、その彼氏が岡本奏子君ってわけか。
 てか、男の味を知って変わる女なんかいっぱいいるじゃん?
 姉さんもそのひとりってだけじゃん。」


『綾実ちゃんはそんな子じゃないわよ……!!』