大事な人が生死を彷徨っているのに、俺は全然泣けなかった。
枯れた目は何も映し出さないことを望んで、現実に見向きもしようとしない。
自分がここまで冷たい人間だと自分でも呆れてくる。
朱光に調べてもらって、大地さんの病院と病室の番号を教えてもらった。
最初はベッドの上で植物の様に眠る大地さんなんか見たくなくて、受付で引き返していたが。
月日が経つと、何だかんだ病室まで足を運ぶ事ができたから、時間の流れってやつは怖い。
「大地さん、やっぱバカだよねー」
「……」
「どうせこんなことになるなら、他人に何か優しくしないで、好きな様に生きてればよかったのに」
「……」
「おやすみ、また来るよ」
あんなに笑っていた男の真顔が怖い。
生きてるのに、動かないなんて
こんなの死んでる様なもんじゃん。
ねえ、死ぬのと生きるのどっちの方が辛い?
俺が問うと、いつも答えてくれるじゃん。
だから大地さん
さっさと目覚めなよね。


