【完】黒薔薇の渇愛







「まあ、未成年だからってなんだって話だけど。
 人轢いちまったら、大人も子供も関係ねーよな」


「朱光、続き」


「あっ……?うん。
 その轢かれた相手、和倉大地だって」


「……っ」


「桜木さん知ってた……?って、桜木さん!!?」



急に走り出して、逢美の倉庫から出ていく俺に向かって、慌てた声で叫ぶ朱光。


その声さえ、灯火の様に、今の俺にとっては小さく感じる。


話のオチは分かっていた。


最近大地さんの姿を見かけなかったことで、何があったかなんて察していた。



でも全部、いいように考えていた。



寂しくなるからなにも言わず引っ越した、とか。


たまたますれ違いが起きているだけ、とか。



こんな俺でさえ面倒見てくれたあの人が、不幸になるはずないと。



夢現な幻想は、これまでだと。神様が言っている様な気がしてならない。



結局……優しい人間の末路なんてたかが知れている。



だけど、どうしてか。



俺はひどく虚無感に陥っていた。