【完】黒薔薇の渇愛





すべてが順調にいっていた。


バイトを始め、貯金が貯まってきた頃
俺は家を出て、一人暮らしを始めた。



保証人はどうしても母さんじゃないと駄目だった。
けど、さっさと俺を家から追い出したかったのか、ブツブツと文句を言いながら手続きしてくれた。


その後は別れ際でさえ互いに無言。


これでやっと、色んなしがらみから解放されると信じて疑わなかった。




高校一年生も終わりを迎え、春休みに入った頃

俺は大地さんに会いに、バイクを走らせた。


「……って、いないじゃん」


大地さんの家に着いて、バイクに跨がったまま家の外見を見渡すけど。
明かりもついてないし、見るだけでも人がいる気配さえなかった。



なんだよー、大地さん。

人がせっかく遊びにきてやったっていうのによー。



しょうがない。明日また会いにくるか。



引き返した。


何度も、何度も。


でも、明日も明後日も明明後日も。

俺がどれだけ会いに行っても
大地さんの姿はそこにはなかった。