【完】黒薔薇の渇愛






「桔梗よ、そんなに寂しいのか、俺がいなくなることが」


「……はあ?」


「お前俺のこと大好きだもんな」


「すっごくキモい。
 さっさとバイクだけ置いて、どこにでも行けよ。
 そして帰ってくんな」


「ひどい。お前反抗期拗らせすぎだろ」



しゅんと落ち込む大地さんは、嫌々バイクを走らせて帰っていく。


夕日に照らされたその後ろ姿は、オレンジ色に焼けてしまいそうだ。



大地さんは約束通り、後日バイクをくれた。


出会って一年、この人は約束を破ったことがない。
だから俺もこの人の言葉通り、もっと色んな人と関わろうと素直に思えた。


朱光と雪羽を誘って、暴走族の『逢美』をつくった。


走らせたバイクに、誰かが俺らの背中をついてくる。


その連鎖で、次第に逢美は大きくなっていった。



寝る間も惜しんで、ひたすら風を感じた。


心にあった空白が、一気に埋まっていくのを感じる。



大地さんの言葉がなければ、今の逢美はなかったかもしれない。