【完】黒薔薇の渇愛









無事、中学を卒業し、高校に入学。


すべてが真新しく見えてくるが。

母親の再婚は、どうも息苦しく
少なかった俺の居場所が奪われていくのを感じる。



「なんで帰ってきたのよ」


相変わらず、先輩の家か朱光の家、夜の街を転々とする日々を送っていたが。
たまに帰ると、いつも嫌そうな顔を母さんは見せる。



「別に、着替え取りにきただけだけど」


「あっ、そう。早く出ていってね」


「あーい」



本当に親子の会話かよ。

我ながら笑えてくる。



香水さんの家に引っ越してきて数ヶ月が経った。


俺の部屋はない。
滅多に帰ってこないから、母さんが香水さんにいらないって言ったんだろうね。


まあ、いらないけど。


母さんは香水に姓を変えたが、俺は『桜木』のまま。


その方がいい。香水なんて俺には似合わない。