「桔梗……っ、いい加減にしなさい……!!」
好きな人と一緒になろうってときに、愛想笑いすらしない子供の親の顔に泥を塗る発言に、ついに母がキレる。
母さんが立ち上がった時、手に触れたコップがゴトッ!と床に落ち、鈍い音を鳴らせる。
ワインレッドカラーのカーペットに水が滲んで、濃くなる。
あっ、と。さすがの俺でもやりすぎたと思った。
「……っ」
母さんが泣きそうになるのを婚約者の香水さんが慰める。
謝りたいとは思ったけど
どうしてか素直になれない。
母さんの隣に今いる人はあの人なんだから
別に、俺が慰める必要もないかとため息を吐く。
だけどこれを機に、母さんとの仲は悪化していった。


